大貫伸樹の書物楽会

2006-02-28装丁探索其の121(おおばひろしと安野光雅)

shinju-oonuki20060228

「つくってないす」

話を盛り上げるためのネタだろうと疑われてしまいそうな話で、持ち出すのが躊躇されるのだが、「つくってないっすよ」。朝の通勤に、新宿サブナードを使っているが、途中、3月15日まで「古本浪漫洲」が行われていて、今日から300円均一が行われている。今日は通勤電車が人身事故に巻き込まれ、1時間も遅刻しそうである。

電車の事故の後に、さらに…… 

急いで会社に行かなければ、そう思いながらサブナードを急ぎ足で歩いていると、なんと、またも事故に出会ってしまった。古本市をやっているではないか。おまけに今日は全品300円均一初日。ちょっとのつもりでのぞいてみたら、『グーテンベルグ聖書の行方」『本のための生涯』『神とともに生きて」などで知られる図書出版社のシリーズがずらっと並んでいるではないか。

古書市とタチクイそばは素通りできない。あんぱんも。

これは安い、と思ったのが運の尽き、10分で済むはずがなく、電車の事故という口実もあることだし、などと言い分けを考えながら漁っている。と、なんと、おおば比呂志装丁、立川昭二『明治医事往来』(新潮社、昭和61年12月初版)と安野光雅装丁、井上ひさし『東京セブンローズ』(文藝春秋、平成11年3月初版)が並んでいるではないか。

似ているよね…… 

ちょっと小躍りしてしまった。なぜって、それは、ブログ「造本探検隊」でかつて、おおば比呂志と安野光雅は類似点が多い、という話を書いており、その後もネタ探しをしていたのだが、今目の前に全くおあつらえ向きに、これを買いなさいと言わんばかりの2冊が並んでいたのだ。アン ビリーバブル!でしょ。

気になる、気になる! 

二人とも私のお気に入りの装丁家であるが、よく似ていることが多いので、気になっていた。決してどちらかがマネをしているなんてことを証明しようなんて思っているのではなく、よく似た考えかをする人がいることに驚き、共通点が多いことに興味を持っているのである。一体どこから来るのだろうか? この共通点。生い立ちや影響を受けた作品などを探ってみたいと思いませんか。 

 

今回のこの二冊も、街並みを俯瞰しているところがよく似ているように思える。おおばは、鉛筆で線画を描き彩色しているようだが、安野は、丸ペンのようなもので、黒い線描きをして透明水彩で彩色している。どちらも線画を基調にして、道路部分には色を付けずに、建物などのモチーフになるところを彩色している。道路が円弧を描くように左上から右下に向かっている。

でも、よく見ると違うんだが? 

人物などをよく見ると、一方は着物を来ており、もう一方は洋服を着ているなど時代背景も全く違っている。瓦の表現も全く違う。しかし、なぜか、この二人よく似た感性が偶然に創り出す共通性が気になるんだな。

 

風景画の中に細密に人物を配して、それぞれの人物が、まるで、映画の一コマのようにしっかりと職業や人格までもが描き込まれて、みんな一人ひとりにもストーリーが描き込まれており、何かをやっているんだよね。この感じは、北欧の画家・ブリューゲルなどの手法にも似ているように思える。 

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