大貫伸樹の書物楽会

2005-12-13装丁探索其の九十五(櫻井書店-14)

shinju-oonuki20051213

瀧井孝作『琴の物語』

 

昼休みに、新宿御苑前の古書店・国島書店に立ち寄ったら、均一棚で里見勝蔵装丁・瀧井孝作『琴の物語』(『少年のための純文学選』桜井書店、昭和22年)を450円で見つけた。文中には、鈴木新太郎の挿絵が6点入ったB5版70頁糸縢り並製本の薄手の冊子である。思い掛けない買いものに笑みがこぼれた。

 

早速、事務所に戻ってインターネットで、古書価を調べてみたら、寺田政明装丁版をあきつ書店では3,675円で、洋学堂書店では2,520円で販売している。保存状態の善し悪しもあろうが、こんなときは、一日中嬉しくなってしまう。

 

この『少年のための純文学選』について桜井毅『出版の意気地』に「櫻井は戦後直ぐその企画を思い立った。そして小説の選択と挿絵画家の選択に思いを凝らした。塚原などの友人の意見も聞き、昭和二十二年に発刊を開始した。選書全体に通じる表紙の装丁は安井曽太郎に依頼したが目の病気のせいもあって、なかなかはかどらないので、断って里見勝蔵にあらためて頼んだ。

 

表紙の原画は期待通りに素晴らしい出来映えだったが、原画を本の寸法にあわせるための微妙な修整のことで里見と櫻井のあいだに意見の衝突があり、櫻井は買った原画を里見のところへ返してしまうということがあった。代わりにくれるはずだった別の絵は結局そのままになった。そういう経過で、里見勝蔵の装丁は、初版限りで、再版は櫻井の友人の画家寺田政明に代わることになった。」とあり、櫻井も頑固だ。

 

自分の装丁に関する感覚に自信があったのであろう。版元の社長が装丁に口出しをすることはよくあることだが、一体どこに櫻井の主張があったのかは、できあがったデザインを見た限りではうかがい知ることはできない。

 

再版も見たいが……

 

こうなると再版の装丁も見たくなるが、待てば海路の日和あり、とのんびり構え、格安の本に出会えることを期待しよう。ちなみに、あきつ書店の3,675円は再版の寺田政明の装丁したものである。

 

下の写真は扉だが、画家名が解らない。これが再版で使われる寺田の装画か? レイアウトがとびら風ではないような気がする。再版は未確認である。

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