大貫伸樹の書物楽会

2006-10-16『徳田秋声全集』が菊池寛賞受賞!

shinju-oonuki20061016

足掛け8年間にわたって私が装丁を手がけてきた『徳田秋声全集』42巻・別巻1(八木書店、写真は第1回配本の18冊)が第54回菊池寛賞を受賞した。特に装丁に与えれた賞ではないが、執筆に対しての賞というわけでもなく、全集の出版企画・編集など総合的に評価されたのだろう。個人の全集で42巻+別巻1という大全集は最近ではないことも受賞の理由だったのかも知れない。徳田秋声は戦前の第1回菊池寛賞を小説『仮装人物』で受賞している。


f:id:shinju-oonuki:20061016211112j:image


f:id:shinju-oonuki:20061016211257j:image

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061016

2006-10-13杉浦非水の植物木版画挿入『四季の趣味』

shinju-oonuki20061013

杉浦非水には『非水百花譜 第二輯』(春陽堂 、昭和4年)等の植物画集があるように、日本画風の植物画を得意としている。それもそのはず、非水は黒田清輝に出会うまでは日本画を勉強していたのだから。

モダンデザインに旗手といわれた非水のもう一面を見る思いがするので、どことなく鑑賞する者に肩肘張らずにリラックスしているような安堵感を与えてくれる雰囲気が漂っているのがいい。

鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年3月再版、初版は15年1月発行)は、そんな非水の手摺の多色摺り木版植物画が4点も挿入されている豪華な本だ。

f:id:shinju-oonuki:20061014034028j:image

気分が良かったのか、趣味があっていたのか、扉にも「春」「夏」「秋」「冬」それぞれの挿絵を描いている。大正15年といえば非水の装丁でよく知られている円本全集のブームを作るきっかけとなった『現代日本文学全集』が改造社から発売される年である。大正12年に仏蘭西留学したが、関東大震災の知らせを受けて帰国するが、アールデコ調を取り入れた装丁をするのもこの頃からだ。

応用美術と言われる受注生産のデザインから離れて、版画を作るのは非水にとっても気持ちのいい仕事であったのではないだろうか。実際に版画を彫ったり摺ったりしたのは非水ではないと思うが、彫師、摺師の名前は分らない。f:id:shinju-oonuki:20061014034256j:image

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061013

2006-10-11与謝野晶子とミュシャ

与謝野晶子とミュシャ

昨日、笠間書院、八木書店と打ち合わせをすませ、駿河台下の横断歩道を渡っていると、向かいにある三茶書房の入り口にアルフォンヌ・ミュシャの挿絵を使った全判のポスターが飾ってあるではないか。そのタイトルが「与謝野晶とミュシャ」。あまりも衝撃的なこのポスターに引き込まれるようにして三茶書房に飛込む。

アール・ヌーボーとについては、「みだれ髪歌かるた」等を通じて話してきたように、今の私の興味の矛先にどんぴしゃりの的がとび出してきたのだ。こんなショッキングでラッキーなことがあるんだろうか? 図録を頂けるなんて全く予期してはおらず、電話などで美術館から取り寄せられないだろうかと思っていたのが、その場で手に入れる事が出来るなんて、三茶書房さんありがとう。

f:id:shinju-oonuki:20061011195149j:image

その後、幡野さんと立ち話をしていたら、来年「笛吹川芸術文庫」をオープンさせるそうで、その建物は、国登録有形文化財(旧武藤酒造・主屋、米蔵)で、実は、幡野さんの実家らしい。展示内容は、芸術、文学歴史文献の展示で、ただいま準備中だそうだ。

さて、話を「与謝野晶子とミュシャ」の図録に戻そう。事務所に戻るまで待ちきれず、帰りの電車の中で読み始め、開いた途端に唖然とさせられるほどのショッキングな写真が掲載されていた。図録「与謝野晶子とミュシャ」(堺市立文化館、2006年)から転載させてもらおう。

f:id:shinju-oonuki:20061011124151j:imagef:id:shinju-oonuki:20061011124529j:image

明星の表紙装画や挿絵を描くときに参照にしたミュシャの絵と、それラのエッセンスをを取り入れて描かれ発表された明星の表紙等が、並列に掲載されているではないか。

写真下の挿絵が『明星』に登場するのは1900年9月刊行の第6号である。与謝野晶子『みだれ髪』の刊行が1901年8月である。約1年ほどのこのタイムラグに私はずっと引きつけられていたのだ。

ミュシャの作品が雑誌の表紙や挿絵として登場するのは、1890年からで、「ラ・プリュム」「ル・モア」「ラ・ヴィ・ポプレール」「イマージュ」「イリュストラシオン」など。1897年7月から「ラ・プリュム」でミュシャ特集を企画する。「藤島武二、一条成美、杉浦非水、長原止水ら『明星』に関わる画家たちが「ラ・プリュム」のミュシャ特集号を目にしていたことは間違いない」(「与謝野晶子とミュシャ」)。

黒田清輝の巴里万国博覧会の土産品の中に、これ等の雑誌が含まれていたのであろう。


なお「与謝野晶子とミュシャ」展は、

於:与謝野晶子文芸館 アルフォンス・ミュシャ館(JR阪和線「堺市」駅下車すぐ)

期 間:9月9日(土)〜11月5日(日) 休館日:第2・第4月曜日

お問い合せは、文化館(電話072-222-5533)。

【展示替のための臨時休館】9月4〜8日、10月9〜11日

 当館は、堺出身の与謝野晶子の多彩な活動を紹介しその魅力を知ってもらうことを目的として平成6年に開館しました。当初より、晶子が活躍した文芸雑誌「明星」の表紙絵や挿絵に取り入れられたアール・ヌーヴォーの代表画家アルフォンス・ミュシャの絵画と与謝野晶子の文学を同時に楽しんでいただけるユニークな施設として運営してきました。本展では、当館の特徴を生かし、与謝野晶子とアルフォンス・ミュシャという2人の芸術家の生涯を紹介するとともに2人の接点や共通点を知っていただきます。

与謝野晶子の自筆資料や遺品、著作など約70点を展示します。

●与謝野晶子美術館のホームページに「ミュシャのポスターは、「明星」で与謝野晶子の歌の挿絵に取り入れらえて広く日本人の目に触れるようになりました。与謝野鉄幹や「明星」のデザイナーたちが与謝野晶子の歌の世界とミュシャの世界が共通することを理解していたからです。」とあるが、間接的ないいまわしで、よく理解できない。

晶子が「髪」に興味を持ったのは、ミュシャの影響である、と解釈してもよいのだろうか。その辺が一番興味をひかれるところなんだが。

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061011

2006-10-10青木茂さんHK解りまし

10月4日に青木茂『書痴、戦時下の美術書を読む』を紹介したときに、宿題となっていた「HK」のサインについて、この連休中にやっと解りました。

「オレの出番1」とばかりに勇んで飛び出したが解読できなかったサインを、

「近代挿絵家のサイン解読第一人者」を自称するものとしてのメンツにかけて

探しまくりました。結果は灯台下暗しで、架蔵書の中から見つける事が出来た。

f:id:shinju-oonuki:20061010142542j:image

挿絵家の名前は本間国雄。

本間には『東京の印象 東京スケッチ集』(南北社、大正3年)の著書があり、「文章世界」「ホトトギス」などに挿絵や装画を提供している。

装丁では 水谷竹紫『熱灰』(南北社、大正2年)、

加藤介春『獄中哀歌』(南北社、大正3年)

などがあり、装丁家、挿絵家としてかなり活躍していた事がわかる。

また、大正初年のフュウザン会に参加して洋画史にも名をのこしており、東京日日新聞の美術記者でもあった(網淵謙錠『血と血糊のあいだ』所収の「幽霊画家を追跡せよ」に委しい)ようである。

今回掲載した本間の挿絵は「ホトトギス」に掲載された挿絵をまとめた高浜清『沙志絵』(光華堂、明治44年7月三版)から転載したもの。

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061010

2006-10-06櫻井書店本、鈴木朱雀装丁、北島春石『ひとすぢ路』

鈴木朱雀(すずき すじゃく1891-1972年、1920年第2回帝展に「吟鳥」入選。)装丁、北島春石『ひとすぢ路』(春江堂、1923[大正12]年)が届いた。イタミ本となっていたので覚悟していたが、表紙1のヒラの部分も函も、とにかく及第点だ。

f:id:shinju-oonuki:20061006182533j:image

ネット通販はほとんど画像がないので、知らない本を購入するときは一か八かの博打のようなものだ。おまけに、料金前払いの時は本が届くまでに1週間ほど時間がかかる。顧客サービスに無頓着すぎる。さらに、メール便は使えず振替口座もない古書店から購入するときは、本代の外にかなりの出費をしなければならない。前払い、振替口座なし、メールなしの3点セットを看板にして大手を振っている古本屋は商売やめちまえ。顧客サービスをなんと心得る!!


ちょっと脱線してしまったが、朱雀、春石そして櫻井均が加わって、この見事な装丁の本がつくられたのだ。以前も紹介したが、やはり朱雀、春石、櫻井のトリオで作った『女の誓』(春江堂、大正12年)といい、今回の『ひとすぢ路』といい装丁の出来はかなりのもので、ひと目見ただけで「胸キュン本」を通り越して、 2階級特進の「抱きしめ本」だ。


この頃の体験が櫻井書店を創業するためのあらゆる意味での礎になっていた事は間違いない。櫻井書店を創業してからもずっとお世話になる鈴木朱雀なのだが、この本にはどこにも名前が記されていない。裏表紙のサインがなかったら朱雀の装画であることを確認する事は出来なくなって仕舞うところだった。この本がでたときの朱雀は若干32歳の青年画家だが、帝展に入選している画家なんだから、活字で名前を掲載してやるべきだったのではないのかな。


櫻井は作家に対しては徹底して腰が低いが、装丁家に対しても同様にしていたのであろうか?

当時櫻井が付き合っていた人達のエッセイなどで、櫻井の人柄を書いたものをだれか教えてくれないかな?


f:id:shinju-oonuki:20061006154859j:image

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061006

2006-10-05ピーターラビットの絵本

shinju-oonuki20061005

擬人化した昆虫や動物の絵を集めていたら、

ピーターラビットの絵本がそんな内容だったと思い出し、

書棚を探したら文庫本サイズ

ビアトリスク・ポターさく、え

「ピーターラビットのおはなし」(福音館書店、1971年)

「モペットちゃんのおはなし」(福音館書店、1971年)

の2冊が出てきた。

妖精もいいが、

動物の擬人化したのもいい、と思い

ネット検索して

『ピーターラビットの絵本』ミニチュアコレクション(福音館書店、発行年不明)

も購入した。

こちらは絵もかわいいが、

サイズもかわいい。文庫本の1/4くらいしかない。

イラストで覆われた

かわいい引き出しに12冊も入っている。

蔵書票作りも、このくらいまでやってみたいですね。f:id:shinju-oonuki:20061005134155j:image

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061005

2006-10-03版画「ちょっと休もっ!」

shinju-oonuki20061003

蔵書票だより「ちょっと休もッ!」

団塊の世代である友人達から、定年退職や再雇用、田舎ぐらしなどの話題が飛び出すようになった。私は勤め人ではないので、年がら年中求職中のようなものなのでその点では気が楽です。

目標がはっきり定まっているときの小休止は新たなエネルギーの補給源として大切ですが、目標がなくなってしまったときの小休止は、そのまま休止続行にもなりかねない。ちょっとした気の緩みの蔭には魔の手が潜んでいる事も。曼珠沙華の赤い休息椅子は、一見心地よさそうだが、危険!危険。

父が40年間勤めた会社を辞め再就職した時に、急に老け込んでしまったな、と思ったのを思い起こしました。今、私もその頃の父に近い年齢になり、父が生まれ故郷に山小屋を建て畑仕事や山の手入れを楽しげにやっていたのを思い出しながら、私はいまの仕事がなくなったら何をするんだろうかと、考えてしまいました。


トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20061003

2006-09-26蔵書票だより「あら〜っav

shinju-oonuki20060926

消しゴム版画蔵書票「アラ〜っ!」

蝶々が鳴いたら、

どんな音を聞かせてくれるんだろうかと考えていたら、

こんな絵が出来ました。

きれいな虫の音を聞かせてくれるアゲハチョウがいたら

せっせとベランダで孵化させるんですがね。


絵のような場面に出合ったら、

きっと「あら〜っ!こんなところに」といって

耳を澄まして聞き入ってしまうでしょうね。

嬉しくなってきっと微笑んでしまうでしょうね。

前回はタテハチョウでしたが、

今回はちょっと大きめのアゲハチョウなので、

妖精の年齢を少しあげてみました。

妖精って年齢の設定があるのかな?

このブログを見た知人からこんなメールが届きました。

> 実は、3月まで娘が通っていた保育園で、

> 在籍中にお世話になったお友達(現在4歳)が、

> 今年5月に突発性拘束型心筋症ということがわかり、心臓移植のため、

> アメリカ、カリフォルニア州のロマンダ大学病院に受け入れが決まっており、

> 年内に渡航できればと考えています。

> 膨大な費用がかかるため、

> 先日21日にに記者会見を開き、いくつかの報道機関でも取り上げて

> 頂いたのですが、

> 現在、「さくらちゃんを救う会」を発足し、三鷹市、武蔵野市中心に、

> 募金活動をみんなで行っているところです。

> HPは、http://www.sakurahelp.com/

> です。

よろしくおねがいいたします。

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20060926

2006-09-20初山滋装丁『アラビアンナイト』

shinju-oonuki20060920

新宿サブナードで、300円均一の古書市が15〜16日に行われた。通勤途中にちょっとのつもりで立ち寄り、本のちょっととおもいながら、7冊も購入してしまった。その内の1冊については、もう一つのブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/higetotyonmageに書いた。


2冊目がこの中島孤島譯『アラビアンナイト』下巻(誠文堂、昭和6年)。上巻はもっているので、私にとっては正に掘り出し物だ。

最近、興味を持ち出した初山滋(はつやま・しげる 1897 - 1973)の装丁なのがナンとも嬉しい。カラーのイラストが8点も入っており、モノクロの大胆な構図の挿絵もたくさん挿入されており、にわか初山ファンにとってはこの上ない魅力あふれる本だ。


本文紙の天の部分には天金ならぬ紺色の天染になっている。背文字も金箔と色箔が使われており、表紙には空押しが用いられている。初山滋の挿画は紙に印刷して貼込んである。

初山滋は、1919(大正 8)年 4月『おとぎの世界』(文光堂)を創刊、その表紙を終刊(1923年10月)まで描いている。

f:id:shinju-oonuki:20060920114824j:image

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20060920

2006-09-07蕗谷紅兒装丁「続百文字選」

shinju-oonuki20060907

伊藤銀月『続百字文選』(如山堂、明治37年)は高円寺の古書市で見つけた本だが、特に購入したい本ではなかった。それでも明治の本ダシ、表紙の絵とサインが気になり500円なのでとにかく購入しておいた。

この続きは「大貫伸樹の造本探検隊」でご覧下さい。

http://d.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/

トラックバック - http://syomotsugakkai.g.hatena.ne.jp/shinju-oonuki/20060907